今のブラック企業よりブラックな仕事!?夏目漱石の「坑夫」の感想

本の感想・紹介

坑夫

といえばどんな仕事を想像しますか?

簡単に言えばl
穴を掘って銅や銀などの鉱物を採掘する仕事ですが、

明治時代の坑夫は

今では考えられないような労働条件

で働いていました。

現代のブラック企業も真っ青!

明治を生きた文豪が書く、当時の仕事のリアル!

夏目漱石の「坑夫」を読んでみた感想衝撃
お伝えしたいと思います。

簡単になれる、わけではない坑夫

鉱山で穴を掘る仕事をしている人はみんな
坑夫だと思っていました。

が、実はそうではないんです。

主人公を鉱山まで連れてきたポン引きは

坑夫になれば儲かる。

自分が口利きすればすぐ坑夫になれる。

と言ってましたが、

坑夫になるまでには相当の階級と
練習を積まなくてはならないのです。

これでは話が違いますね。

では坑夫以外にはどんな仕事があるのでしょうか?

坑夫以外の仕事

堀子

坑内の運搬夫。

「手子」、「穿子」とも言って、
採掘現場からから坑道まで鉱石を担いで運搬する仕事。

一人前の坑夫として使えないものがなる、
坑夫の下働きといったところです。

 

シチウ

支柱夫。

坑内での大工のようなもので、
坑道の保守作業などの仕事をする。

 

山市

石塊をコツコツ欠くだけの仕事で、

結婚した坑夫の子供などが坑夫見習いとしてやる仕事。

 

他にも、

  • 坑夫たちをまとめる親方
  • 坑夫が落とすお金を目当てに集まった遊女
  • 独り身の坑夫の食事などを世話する世話役女
  • 鉱山の見やり役人

など様々な人間が鉱山に集まっています。

死と隣り合わせの仕事、坑夫

よく、仕事のキツさを3Kや4kなどといって
表す言葉がありますよねー。

では坑夫はどうなのか、
自分なりに考えてみることにしました。

まず最初に外せないのが、

暗い坑道

坑道という穴の中で仕事をするので、
これは絶対外せません。

地中に潜って穴を掘り、

頼りになるのは
自分が持つカンテラの明かりだけ

縦横無尽に走る横穴を、

頼りないカンテラの明りだけで移動するのは恐怖です。
電灯で照らされた鍾乳洞が恋しくなりますね。

臭い・汚い仕事

肉体仕事で穴の中。
臭くないわけがありません。

ちなみに穴の中なので、泥にまみれて汚れます
当然ですね。

危険がいっぱいの坑道

何といっても鉱山の仕事は危険がつきもの!

主人公が向かった場所は銅山で、
採った鉱石を真っ暗な穴に放り込む作業だけでも
恐ろしいですが、

横穴を掘り進めるのにダイナマイトを使ったり。
穴が土砂で埋もれる危険もあります。

が、実は作業場に移動するだけでも命懸けなんです。

作中では、ほぼ垂直に伸びる下穴を、
縄梯子でずんずん降りて行くシーンがあります。

この場所のことを主人公は「蜀の桟道」に例えていましたが、
三國志でも同じみの峻険な地形です。

命綱なんてもちろんないので、
手を放して落ちてしまったら終わりです。

そんなところを、
雫が落ちて、明かりが揺らぐカンテラを持ちながら、

手が抜けそうになる

足を踏み外しかねる。

と苦しげに降りて行く主人公の気持ちが
伝わってくるようです。

そしてようやく下まで降りた先は終わりではなく、
まだ苦難がありました。

それは地下水です。

場所によっては腰ほどまで水が
溜まっているところ
もあり、
作業場に行くだけで危険の連続ですね。

そしてようやくたどり着いた作業場で、

真っ暗な中6~8時間もひたすら掘り続ける
のは気分が滅入って鬱になりそうです。

帰れない

誰もやりたくない仕事の中に
「帰れない」というのがありますね。

残業があったりしてなかなか家に帰れない事を言いますが、

坑夫の仕事は一度落ちてしまうと
這い上がることは難しい
底辺の仕事

家どころか、世間に帰る事も危ぶまれる職業でした。

若い時分の一時の迷いで
世間にさらされるのが嫌で自殺を考えていた主人公

死ぬに死にきれず
かといって世間に戻る気にもなれなず

ポン引きに声を掛けられ言われるがまま、
死ぬに等しい底辺の仕事「坑夫」に落ちていきます。

そこは一つの社会が出来上がっており、

世間で憂き目にあった人物
などが集まってくる巣窟だったのです。

安い給料、臭い飯

坑夫という性質上、
仕事の環境が最悪なのは言うまでもありません。

私が何よりも驚いたのは、
彼らの労働条件についてです。

本書によれば、

坑夫は請負仕事で間が良ければ、
日に1円、2円に当たることもあるが、

堀子は日当が決まっていて、
しかもその内の五分(5%)は親方が取ってしまう

そのうえ病気で働けなくなったら手当は半分…

そこから布団を使うための料金と、飯代が取られる。
ちなみに飯代とあるけどおかずはまた別料金

ご飯代はまだいいとして、

間違いなく毎日使うのに、

布団代取るんかーい!

って驚きました。

しかも、それが清潔で毎日天日干ししてるならいいですが

いづれも薄汚いものばかリで、
南京虫がたかっている

ような布団ですよ。

仕事で疲れているのにこんな布団でしかも雑魚寝
最悪ですね。

ご飯はご飯で、壁土のような南京米

銅山に来る途中で食べた蠅のたかった揚饅頭や
堅いふかし芋の方がごちそうだった

というくらいだから、相当ひどかったのでしょう。

Kill(死)

死と隣り合わせの鉱山での仕事には、
葬式がつきものでした。

ここでは葬式のことをジャンボーという
隠語のような言葉を使っていました。

シンバルのような楽器を打ち鳴らし、
陽気な歌騒ぎながら担がれていく簡素な棺桶。

面白がって病人を無理やり引っ立てて、無理やり
ジャンボーを見せる同僚たちの無邪気で冷徹な残酷さに
主人公同様心臓が冷える思いがしました。

「坑夫」を読んだ感想

夏目漱石の「坑夫」を読むきっかけは
またもやFLOWERS」でした。

ゲームの中で、

最初から最後まで変わらない

成長しない主人公が恐ろしい

といわれて気になって読み始めたこの本ですが、

「坑夫」という職業について、
明治時代の「坑夫」のリアルを目にするようで、
「FLOWERS」の主人公とは別の意味で恐ろしくなりました。

江戸から新しい時代になったばかりで
差別が色濃く残る明治時代。

廃坑跡を訪れたことはありますが、
「坑夫」という仕事がいかに過酷で
ひどい生活環境にあった仕事だとは思いもしませんでした。

しかし、

決しておどけてるわけじゃないけど、
川に流される水草のような主人公の性格が

恐ろしくも面白く「坑夫」の仕事を書き立てています。

だいたい

「坑夫」なりたいんです

と来て、健康診断で「気管支炎」といわれて「坑夫」になれず、
帳付の仕事を与えられてるところからして笑い種ですね。

 

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